中華料理は世界中どこでも馴染み深い料理だと思う。
ただ、中華料理と一口に言っても、中国国内の各地方によって特色があって、食べるものや味も異なるというのは有名な話だ。

そうした「中華料理の多様性」は、日本の中華料理店でも、たまに見かける「四川料理」や「広東料理」といった看板から、身近に感じとれるかもしれない。

日本に留学していた中国人の友人に聞いたところによれば
「中国では地方によって食べるものや味付けがけっこう違う。日本でいうところの関西と関東の味付けの違い程度とは異なる。ちなみに、中国で食べる中華料理と日本で食べる中華料理は全く別物」
とのことであった。

「四川料理」や「広東料理」といった種類のほかにも、いわゆる「ジャパニーズ中華料理」なるものがあり、普段日本人が親しんでいるのは、こちらということなのだろう。

となると世界各国で食べる中華料理もそれぞれ味が異なっていたりするのだろうか。
例えば、イタリアンテイストの中華料理やアメリカンテイストの中華料理といった風に。

 

前置きが長くなったが、今回紹介するのは「テイクアウトのアメリカンな中華料理」および、それが登場する「エターナル・サンシャイン」という映画だ。

 

〇「エターナル・サンシャイン」について

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2004年公開のアメリカ映画。
奇抜な展開の作品で有名な脚本家、チャーリー・カウフマンがプロデューサーおよび脚本を務めている恋愛映画だ。
ちなみにアカデミー賞の脚本賞をはじめ、様々な賞を受賞している作品でもある。
お互いに記憶除去の手術を受けた男女が主人公で、「記憶」と「愛」をテーマにしている。

 

主人公のジョエルとクレメンタインはカップルである。
しかし、近頃ギクシャクしており、クレメンタインが癇癪から「記憶除去手術」を受けて、自分の中の「ジョエルに関する記憶」を消去してしまう。
その影響で、赤の他人のような振る舞いを見せるクレメンタインを見て、ジョエルの方も癇癪を起こし、「記憶除去手術」を受けて、自分の中の「クレメンタインに関する記憶」を消去しようとする。
しかし、ジョエルは「記憶除去手術」の最中、クレメンタインとの思い出の中を彷徨いながら、無意識下で記憶除去に抵抗し始める。

 

というのが本作品の大まかなあらすじだ。

主人公であるジョエルをジム・キャリーが演じている。
平凡なことにコンプレックスを持ちながら、少々“チョロさ”を感じさせる主人公を好演している。

内容の大筋は先述したとおりであるが、「記憶除去手術」中のジョエルの記憶世界の描写は、当時としては斬新で、今見ても面白い。
また、手術中、眠り続けるジョエルをよそに、現実世界でのクレメンタインや他の登場人物たちが起こす、すったもんだの展開も面白く、脇を固める人物らの内面の掘り下げが興味深いのも特徴だろう。

 

〇「テイクアウトのアメリカンな中華料理」

ジョエルの記憶世界で、クレメンタインとの思い出が一つ一つ繰り返される。
その思い出の一つとして登場するのが、ベッドの上で隣り合い、2人で紙パックに入ったテイクアウトの中華料理を食べるシーンだ。

実は、この紙パックに入ったテイクアウトの中華料理、登場する洋画や海外ドラマがなかなか多い。
作品中で「見たことがある」と言う方も多いのではないか。

もちろん、これだけ登場するのには理由がある。
アメリカでは中華料理はピザなどと並んで出前やテイクアウト料理の代表格らしいのだが、そのお手軽さか、「忙しい」や「わびしい」、「味気ない」、「独り身」
といった人物描写やそうした雰囲気の表現として、劇中で使われることが多いのだ。
もう少し詳しく知りたいという方は、「テイクアウト中華_洋画」で調べてみるといい。

 

さて、その「テイクアウトの中華料理」であるが、本作「エターナル・サンシャイン」でも、そんな「味気なさ」の象徴として登場する。

ジョエルとクレメンタインは2人して「中華料理のテイクアウト」を食べながらも、その様子はどこかぎこちなく、暗い。
お世辞にも、会話が弾んでいるとは言えず、2人して、箱の中の中華料理を淡々とつついているといったところだ。

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(「エターナル・サンシャイン」本編より)

 

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(「エターナル・サンシャイン」本編より)

2人の間の関係の冷え込みを表現する上で、ここでも「中華料理のテイクアウト」がちょっとしたアクセントになっている。

ちなみに、この後、テイクアウトでなく、店内で中華料理を食べるシーンも登場するのだが、その際の2人のやりとりも、またぎこちない。
「また中華」
といった発言もあり、2人のマンネリの象徴として印象的だ。

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(「エターナル・サンシャイン」本編より)

 

僕としては、「アメリカンテイストな中華料理」は、食べ方もあいまって、
美味しそうに見えないこともないのだが、
本作ではどこまでも不遇に感じられる中華料理なのであった。

 

(文/三田稔/ライター)